バンコクから南に、夜行列車で17時間、
ミニバスで2時間、着いた波止場から、さらにボートで7時間。
アンダマン海に浮かぶ小島、リペ、タイ最南端の島。
こんな僻地で日本人の母子連れに出逢った。
「ワーイ、こんなところで日本人の顔を見れるなんて!」
全員まっ黒に日焼けして、ほとんど現地人もどきの女性が日本語を喋った。
「日本語、話すんだ?」
8才と4才の娘2人、生後5ヶ月の男の子を背負い、
乳母車にオムツを積んで、ボートから下りてきた。
こんな一団、白人だって旅してない。
中年のこざっぱりした男の人が同行していた。
彼の名はKさん、日本の旅行誌のバンコク駐在員だという。
途中にあるタルタオ島で、この母子達に出会った。
母子4人は、彼の取材行動に便乗してきたのだった。
「キレーねー、この島」
「ダンナは仕事で東京に残してサー、6週間前にバンコクに着いてサー、
ピーピー島、ランタ島って渡ってきたんだけど、この島が一番キレーみたい!」
「アイちゃん、サイちゃん、そのへんで遊んでらっしゃ−い、エンちゃんはオネムねー」
「ここ、食事はおいしい?宿はいくら?」
荷物を浜に置き去りにし、Kさんはビールを飲みはじめ、
2人の娘たちは、もう島の子供たちと仲良く遊んでいた。
2日後、Kさんはバンコクへ帰った。
一方の母子達は2週間ほどこの島に滞在する予定という。
毎朝、目が覚める頃になると、我らのコテージ前が騒がしくなる。
アイちゃん、サイちゃんが遊びに来るのだ。
「まだ起きないのかなー」
「ダメよ、おじさんさんたち疲れてるんだから」
「朝食済んだ?」
「ウン、だから遊ぼー」
「今日は何するの?」
「今日はね、お買いものと、海で遊ぶのー」
「いまお母さんは洗濯、だから終るまで遊ぼー」
「このババナ、見た目は悪いけど、食べたことある?
おいしいよー、モチモチしてサー、20バーツにおまけしてもらってサー」
恐いもの知らずというか、好奇心いっぱいの親子は、いたってエコロジー。
売る方だって微笑ましくなって、ついついおまけちゃう。
「こんな旅できるの今しかない、幼い子が一緒だからやりやすいの、
出会う人、みんな助けてくれちゃってサー、すっごく得しちゃうしサー」
誰かまわず、すぐに仲良くなっちゃう、
笑い声の耐えない気さくなファミリー。
約10日間、その島で一緒に遊び、食べ、過ごした。
日本に帰った後も、ときどき逢う機会がある。
夏になると、ダンナを連れて長野の工房へ遊びに来る。
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